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ikedaayako

アクリル絵具やクレパスなどで繊細に描かれる肖像画に、ときおり差込まれるコラージュや絵具のかたまり。人物たちの表情の明暗や筆致の「間」のようなものから、見ている側に確かに伝わる奇妙なリアリティがあるのです。洗練された構成力は、池田綾子さんが独学でキャリアをスタートさせた頃から注目を集めてきました。ファッション画の素養をも援用する着想豊かな画風は、アパレルメーカーなどとのコラボレーションにもつながっています。そんな池田さんがGALLERY SPEAK FORで「vivid reality」展(2014年6月6日〜18日)を開催します。久しぶりの本格的な個展を前にした彼女に、「絵を描いていないとダメ」なんだと悟った少女時代、そしてマイペースで自分の心境を絵にのせていく感覚など、ありままの創作生活を語っていただきました。

photo : Kenta Nakano


 

描いていないと私はダメだと

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絵はどのようなプロセスで描いていますか?

ikedaayako(以下、A):
クレパスやアクリル絵具、鉛筆などを使って描いています。キャンバスに描くこともありますが、クレパスでこするように描くとキャンバスが歪むので、木パネルの板面に直に描くほうが多いですね。最近では、それらに自分で描いたイラストや絵具のかたまりをコラージュしたりもしています。例えば、人の顔の絵の周りに何か別なものの絵を貼るとか。直接描き加えるのと、描いたピースを貼るのでは質感が全く違って面白いんですよね。その手法が好きというよりは、その行為が楽しいからやっている側面もあると思います。もちろん気分で、普通にアクリル絵具だけで仕上げるものもあります。

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アーティストになられたきっかけは?

A:
小さい頃から絵を描くことは好きでしたが、自分が絵を描いていることに、高校生時代まではちょっと恥ずかしいという気持ちがありました。理由は分からないけど、恥ずかしい。だけど毎日毎日、テレビゲームなんかもせずにペンや水彩で絵を描いていて、それがやめられなくて今もやっているようなところがありますね。よく友だちから、絵をずっと続けていてすごいね、と言われるんですけど、どうしてすごいのか全然分からない(笑)。絵の学校に入るつもりはなかったんですが、やはり描いていないと私はダメだなと思い、見学して気に入ったセツモードセミナーを選びました。ファッションと絵のコースがあって、絵のほうです。放任主義の学校だと思うんですが、私はガリ勉系で(笑)、その日の絵の反省点を記録しておいて、次回は直そう、なんて目標を立てるような学生でした。在学中に二人展を経験し、卒業してからはひとりで機会を見つけては発表しています。

架空の人物にエモーションを宿す

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絵のモデルになっている人物たちは、誰ですか?

A:
全て架空の人たちです。友だちや家族はあまり描いたことがなくて、架空の人に宿すという感覚ですね。何かが起こって体験したときの気持ちの動きを形として残そうというのがモチベーションになっているのかも知れません。描いている時は、なんて可愛いんだろうって思って描いていたはずなのに、何ヶ月後か何年後かに改めて見て、恐ろしいって感じたりすることも。そのくらい、その時々のリアルタイムな表現なんだと思いますね。生活しているなかで、様々なインスピレーションを得ていると思いますが、音楽が占める比重は大きいです。もともと音楽が好きで、楽曲を聴いてるだけで涙が出ちゃう時があるんですけど、そういうものを作れる人ってすごいなあという憧れがあります。ものづくりをしている方たち全般に憧れはあり、ビヨークなど女性シンガーへのリスペクトは特に高いですね。

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これまでの個展では、どんな反響がありましたか?

A:
ある時、私の展覧会にいらしていただいたお客様で、自分の家のどこに飾るのかをあらかじめ決めてから来ましたと言って、絵を買ってくださった方がいて、それがとても嬉しかったんです。アートが主役になるというより、私はインテリアや生活の一部にうまく融合してアートがあるというような状況が好きで、そういう感覚で見ていただいたり、買っていただけると嬉しいですね。

色のかたまりを加えて完成形に

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今回の展覧会について教えてください。

A:
タイトルは、直訳すると「生々しい現実」でしょうか。私の絵は、自分の身に起こっていることが元になっているんですけれど、平穏な日常を過ごしている中で、突然起こることってあるじゃないですか。嬉しいこともそうじゃないことも含めて、現実をバーンと見せつけられるような衝撃が。そんな絵のなりたちを示せるかと思ってつけたタイトルです。過去作も入りますが、ここ1年くらいの近作が主体になる予定です。以前はスモーキーでグレーイッシュな絵が多かったのですが、近作では色味が鮮やかになりました。人物にあえて色のかたまりをポタポタと落としてミックスさせた絵もあります。人物画の色といえば、洋服の色や肌の色がおもになりますが、絵具のかたまりで見せたほうが伝わることもあります。だから人物を色でつぶしているのではなく、それによって完成させている、という感覚です。

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おすすめの物販アイテムについて教えてください。

A:
バンダナがおすすめです。絵を印刷してそのまま身近で使えるものがいいなと思って作りました。また、トートバッグが前回の展示の時に評判が良かったので、また二種類作ります。そして、インクジェットプリントをした私の絵に、手描きで着色を加えたパネル貼りキャンバスを販売します。ベースが同じだけど色違い、というのが絵なのにグッズっぽく、ポップで楽しいと思います。

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近い将来の目標をお聞かせください。

A:
展覧会は、年に1〜2回は開くようにしています。ギャラリーだったりショップだったりしますが、個展のたびにそこだけで再会できる人っているんですよね。そのペースは今後も大切にしたいと思っています。もっとファッションブランドとコラボしていけるといいですね。洋服やバッグに絵をプリントしたり、お店の内装などにも関わっていけたら楽しいだろうなと。柔軟性はあるつもりなので、世界観が近いブランドかどうかに限らず、恊働してみたいです。あとは少し夢のようなレベルですが、大人の絵本を作ってみたいんですよ。今の私の絵からは想像がつきにくいかも知れませんが、全く新しいものになるはず。お話になるかどうかは分からない、画集のような絵本になるんじゃないかと思います。

ikedaayako(ペインター)

池田綾子。新潟県生まれ。2008年にセツモードセミナーを卒業後、本格的に創作活動を始める。2010年「kawaii賞」展にて審査員賞を受賞し、注目を集めた。近年の個展に「ikedaayako exhibition」(2011年、日本橋・inter-movement gallery)、「 - akogare - the impulse inside girls」(2012年、銀座・ART POINT)、「Hi, her world.」(2013年、中目黒・kisai)がある。その他、「アート京都 2012」「青参道アートフェア 2013」などのフェアへ積極的に参加している他、国内外のファッションブランド、アクセサリーブランドとのコラボレーションも手がけている。

http://ikedaayako.jimdo.com


「vivid reality」展についてはこちら
http://blog.galleryspeakfor.com/?eid=623